第2回「学校自慢エコ大賞」 提案提言の部 「大賞」 可児市立今渡南小学校六年 亀谷拓史くん
つながる命、つながる世界
それは本当に小さな小さな卵だった。直径何ミリどころの話ではない。それでも、その卵達は柔らかな、それでいて鮮やかな黄色い光を放っている。まるで、やがて成虫になって水辺を舞う姿を想像させるかのように。

 祖父が子供だった頃、学校の近くを流れる可児川には多くのホタルが飛んでいた。可児川にかかる橋には「蛍橋」という名の橋があるほどだ。しかし、ぼくは可児川でホタルを見たことがない。父が子供の頃でさえ、ホタルは可児川から姿を消してしまっていた。

 ぼくの学校では、全校を挙げてホタル育成活動に取り組んでいる。ぼく達はホタルの成長とともに一年間を過ごしていく。
 まず、五月、ホタル室での交尾が始まる。捕獲の許可をもらったホタル達を箱に入れ、水苔に産卵させるのだ。
 ぼくはこの黄色く光る卵がとても好きだ。とても小さいのにどこか力強くて、卵を見ていると「よし、ぼくも今年一年間頑張ろう」、という力がぐんぐんわいてくる。
 やがて卵はふ化し、約七千匹の幼虫となる。
 さあ、ここからが大変だ。ぼく達はこの幼虫を九ヶ月間、水盤で飼育する。幼虫は食いしん坊だ。えさになるカワニナは、ホタルのふるさとである可児川から取ってくる。
 最初にカワニナを金づちで割って中身を取り出した時は、そのぬるっとした感触にかなり戸惑った。しかし、目に見えないくらい小さかった幼虫が少しずつ成長していく姿を目の当たりにすることができるのは、本当に楽しい。また、ぼくらには「地域のホタル講座」の方々の協力という強い味方がある。まさに、小学校と地域が一丸となった活動なのだ。
 そして、三月、いよいよ幼虫放流会。学校の校庭を流れる人工の川「ほたる川」と地域の可児川の両方に一年間育てた幼虫を放流する。
「ちゃんと飛ぶんだぞ。夏になったら飛ぶんだぞ。」という願いを込めて。活動が始まった頃、ほたる川で数匹しか確認できなかったホタルだが、昨年は延べ四三匹、そして、活動開始から三四年経った今年、連日三十から五十匹のホタルが確認された。
 ぼくは毎日のように家族でホタルを見に行った。真っ暗な空間を幻想的に舞うホタルの光。ぼくは心の底から熱いものがぐっとこみ上げてくるのを感じた。

 世界中で環境が問題になっている今、ぼく達の、地域の川を清掃しその川にホタルを返す、という活動は、とてもちっぽけなものかもしれない。
 しかし、どんな川もやがては海へとつながり、その海は一つになる、と考えたとき、ぼく達の活動は空間を超えて地球規模に広がっていく。
 祖父の時代の川を取り戻そうと考えたとき、ぼく達の思いは時間を超えて過去から現在へ、そして未来へと続いていく。
 卵からふ化した幼虫が成虫になり、またその成虫の卵を育てるという経験を通じて、ぼくは地球上の命のつながりを感じることができる。これが、ホタルと共に歩いてきたぼくの六年間だ。
 ぼくはこの活動と小学校を心から誇りに思う。